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―――青天井も魅力のひとつですが、天気が崩れると…。
小雨程度なら風情が増すというものですが、本降りになるとさすがに食事はできません。とは言え、そんなときのための配慮も万全です。雨の場合も、お部屋を確保してございますので、安心しておくつろぎいただけます。もっとも床を営むお店のすべてがそうではありませんのでお間違いのないよう。加えて「幾松」の床の特徴を申し上げるなら、テーブル席と高膳が選べます。年配の方や外国人のお客様は座りやすいテーブル席を好まれますが、芸妓や舞妓を招いての席では高膳の方がよろしいようです。鴨川を向いてカウンター式に並んで座る御席も人気があるんですよ。
―――芸妓さんを招いての宴も情緒があって良いですね。
とは言え、あんまり盛大にされると周りの皆様に迷惑がかかります。お囃子や踊りはもちろん、大声で話すのもマナー違反。近年は煙草もご遠慮願っています。こう言うと堅苦しく感じるかも知れませんが、皆さん無理なく馴染んでいらっしゃる。初めて床を体験する一見さんも、常連さんの振る舞いを見ているうちに、自然と身についてくるものなんですね。床を体験したことの無い方には、ぜひ常連さんの多い老舗から訪ねてほしいと思います。
―――大文字、東山、比叡山の雄大な景色を眺め、御馳走をいただくのも川床の大きな魅力です。
青空にくっきり浮かぶ山の稜線も見応えがありますが、やはり日が傾く頃合いが素敵です。空の色が鮮やかな紅から神秘的な紫に染まりゆき、とっぷり暮れると川面に行灯の明かりがにじむ。耳を澄ませば川のせせらぎ、風の音、鳥の声。夕立の後はほのかな土の匂い、膳からは鮎の薫り。この季節に最盛期を迎える鱧の歯ざわりや味わいは絶品です。このようにひとが備える五感(見る・聞く・触る・食べる・嗅ぐ)の全てを使って味わうのが床の魅力。自然を愛する人はもちろん、子どもの情操教育にもぴったりなんですよ。
―――興味はあるけれど、なんとなく敷居が高いんですよね。
お客様の層を見ると、年々若い方が増えていらっしゃいます。それもごく普通の女性がお友達と一緒に浴衣を着てお見えになられる。「和の心がきちんと継承されているんだなぁ」と思うと本当に嬉しくなり、つい声をかけてしまうことも(笑)。“粋を愉しむ”という意識は男性の方が強い様子で、おあつらえの背広で来られる方もしばしば。堅苦しくなく、砕けてもいない、そんな床ならではの美意識を共有した人々にこそ、極上の納涼をお愉しみいただきたいですね。 |