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Vol.6 近又 女将 鵜飼真澄さんのおすすめ  
近又 女将 鵜飼真澄さん

―――鉾町(ほこまち)のすぐ近くに暮らして、祇園祭をずいぶん身近に感じてこられたのでないでしょうか。


この家へ嫁いで25年以上になりますが、つくづく、祇園祭は暮らしの一部なんだなと感じています。お囃子の練習が始まり笛や笙(しょう)の音色が流れてくると、「あぁ、祇園祭やねぇ」と日常の会話がそこにある。当たり前のように、一番近い長刀鉾(なぎなたぼこ)の厄除けの粽(ちまき)を求め、毎年交換します。義母は、巡行前夜の日和神楽(ひよりかぐら)を見ないと忘れ物したような気持ちになると言いますし、「あんなに人の多いとこ、かなんわ」と言いながら、お稚児さんの注連縄切りをぶらりと見に出かけます。子供とのことで言いますと、祇園祭には神幸祭と還幸祭がありお神輿さんが出るのですが、還幸祭のとき、錦のあたりで休憩しているお神輿さんを子供らが見に行くと、よくソーダ味のキャンディーをくれはったんです。息子は神輿に乗せてもらって、「大きぃなりや」と言ってもらったりしたものです。


―――学生の頃の思い出はありますか?

 私は大学から京都ですので、何も知らないながらも圧倒されましたね。重要文化財級の見事な装飾を施した山鉾が、普通に道にあって、普通に動くなんて。それを町衆が守ってきたということに、京都人の底力を感じたように思います。誇りやエネルギーがないと、とても守り通せるものでありませんものね。宵山はやっぱりデート。私にはご縁がなかったけれど(笑)。そっと待ち合わせて、秘め事のように鉾を見て歩く、そんな感じだったように思います。そういえば、「祇園祭は初恋みたいなもの」とおっしゃる方がありました。

―――祇園祭には、特別なお料理やお部屋のしつらえがあるのでしょうか。

祇園祭というか、夏のしつらえですね。暖簾(のれん)が、茶色の綿から白い麻に替わり、襖や障子はよしずや御簾(みす)に、床にはあじろを敷きます。お祭りになると軒先に提灯も点します。お料理には鱧は欠かせません。祇園祭の頃は鱧がとてもおいしいものですから。私どもでは、鱧鍋や、塩焼きとつけ焼き盛った源平焼きなどさまざまな趣向でお出ししています。

―――最後に、祇園祭のおすすめの楽しみ方を教えて下さい。

 私らは人の引いた夜の11時頃から、浴衣を着てゆっくり山鉾を見せてもらいますが、早朝の散歩もいいそうですよ。宵山なら錦市場。ここにも夜店が出るのですが、それほど人も混みあわないですし、雨が降っても大丈夫。山鉾巡行では、出発前、山鉾が集合する四条室町や新町の凛とした空気が好きです。細い道に鉾がズラリと並び壮観で、「さぁ行くぞ」という思いがひしひしと伝わってきて・・・。豪快な辻回しはもちろんですが、この道から広い烏丸通に出るのもなかなかたいへんで、方向転換には見ている側も力が入ります。表舞台に出る前、奮闘する男集の姿が素敵ですよ。

近又 女将 さん

<プロフィール>

徳島県生まれ。龍谷大学卒業後、着付けの講師などを経て、昭和55年、近又7代目当主・治二氏と結婚。中学の頃より華道・小原流を嗜み、自ら、客間や玄関の花を活け、お客様を迎えるのが日課。「お客様の前にできる限り顔を出すこと、お客様の目的や要望に沿うTPOをわきまえた“おもてなし”を心がけています」と話す。

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