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昭和三年(1928)、曳き舟で知られる京都、高瀬川のほとりで産声をあげた、京料理「たん熊北店」。高瀬川筋は江戸時代、季節の川魚を扱う生州(いけす)料理屋が櫛比(しっぴ)した処。「たん熊北店」は、そんな伝統を踏まえつつ精進を重ねてきた。とくに初代が考案した一人前用の「丸なべ(すっぽん鍋)」は好評で、同店の代名詞ともなっている。

戦後も両千家をはじめとして、谷崎潤一郎氏、吉井勇氏などの文人墨客(ぶんじんぼっかく)に愛された。とくに一階カウンターの左奥は谷崎潤一郎氏の、いわゆる指定席だったとか。当時の人々の憧れの的で、今もこの席を好んで座るお客様が後を絶たない。 京料理界にあって同店は一、二をあらそう老舗と言える。建物は昔ながらの町家を改装したもので、客室の装飾は努めてシンプルに、BGMも鳴らさない方針。静かに語らうも良し、芸妓さんたちを呼んで三味線の音色や小唄を愉しむも良し。ほんものの古都の雅を満喫したい方に選ばれている理由が此処にある。 |