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都会の喧騒の中にありながらも、古い町並みと閑静な佇まいを残す麩屋町(ふやちょう)にある老舗の宿「炭屋」。鍛冶屋を家業とし、炭で火を起こしていたことが屋号の由来である。大正期には全国から茶の湯をはじめ俳諧(はいかい)、能、謡(うたい)などに通じる粋人達が集まり、今でいう文化サロンの様を呈していたが、万人に酒肴(しゅこう)を薦め寝所を用意する主人の厚いもてなしが興じ、宿屋を営むこととなった。

謡曲の題などを銘にした部屋は、全て京の北山杉を使った数奇屋(すきや)造りの座敷で、欄間には贅を凝らした細工が施されている。また、高野槙(こうやまき)を使った風呂は豊かな香りと木の温もりで、訪れる人々を癒している。

玉兎庵(ぎょくとあん)、一如庵(いちにょあん)など五つの茶室を持ち、露地、庭には井筒や燈籠を配する「茶の家」でもある。裏千家の老分職をつとめた先代と、先々代の命日にあたる毎月七日と十七日の夜には「月釜」と称して釜を懸げて茶を振る舞い、供養としている。また、お茶の正月といわれている秋の「口切茶事」をはじめ、季節毎に様々な茶事も行われる。 |