[先斗町・木屋町]
屋号を染め抜いた麻暖簾が風に揺らめく、瀟洒な割烹を思わせる風情。「れすとらん」の札がかかるものの店内は窺い知れず、通りがかりの来客はまず無いとか。それだけに常連を引き付けて離さない確かな実力があると言える。供されるのは、和の素材を洋のエッセンスで仕立てた、繊細かつ優しい味わいのフレンチ。舌の肥えたご年配の方からヘルシー志向の女性や若者まで幅広い層に支持されている。
暖簾をわけ、格子戸をくぐると、店内を貫く長いカウンターが視線を奥へと誘う。まさに「鰻の寝床」といった様相で、いかにも京都らしさが感じられる。インテリアは天然木をふんだんに使ったシックな装い。オープンキッチンで、料理人と気軽に会話ができるのも嬉しい。手元に並ぶのはナイフやフォークなどのカトラリー、そして一膳の箸。フレンチを盛る器には京焼きも用いており、和と洋の競演を存分に愉しめる。
アミューズからデザートまで、コースメニューは10品前後。バリエーション豊かな前菜は、ひと品ずつ別の皿に盛り付けられ、お披露目の度に感嘆の声が漏れる。メニューは月替わりで、春には蛍イカとサーモンのマリネ、帆立て貝のムース(筍と茸入り)が好評だ。いずれもポーションは軽く、バターも控えめなので、メインの和牛ステーキか季節の魚料理まで軽やかに食がすすむ。締めはお茶漬けで、水菜やシソ風味の大根などが後味の清涼感を誘う。比較的リーズナブルなランチでも、独自の魅力を堪能できると評判だ。
京都で長年フレンチの腕を磨いて来た西島シェフが同店でつくる料理は、様々な創意工夫で素材の持ち味を引き出したものばかり。「フレンチの枠にとらわれず、多彩な切り口ある料理を提供したくて…」との開業理由にもうなづける。素材へのこだわりは安全性や栄養面にまで及び、野菜は契約農家と信頼できる八百屋から、鮮魚は中央市場での目利きを怠らない。「すべてはお客様に“幸せ”を感じてもらいたいから」と照れながら話す西島シェフ。この笑顔に会いたくて訪れるお馴染みさんも少なくないはずだ。