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八坂神社の南、閑静で落ち着いた佇まいの中に、粋な風情を漂わせる祇園下河原。花街を近くに控え、時おり三味線の音が聞こえてくる。そんな下河原通りに、大正初年(1912)創業の料亭「美濃幸」が古風な表構えを見せる。 打ち水された石畳の露地(ろじ)を抜けて玄関へ。初代が茶人の薫陶(くんとう)を受けて造ったという建物は、雅びの美学が生きた数寄屋普請(すきやふしん)。風雅なしつらいの大小13の座敷があり、いずれの部屋からも美しい庭園が臨める造りだ。

そんな落ち着いた座敷でいただくのは、茶懐石の心を原点とした季節感あふれる「風流懐石」。旬の素材の持ち味を大切にし、技巧に走らず、器との調和で魅せるという懐石料理の基本を守った料理の数々。五味五色、自然の恵みたっぷりの品格のある料理は、まさに京料理の真髄(しんずい)といえるだろう。食事の前に抹茶とお菓子がふるまわれるのも、茶事の流れを汲む、この店ならではのもてなしだ。 茶懐石といえば、堅苦しいイメージがあるが、「茶懐石の心はそのままに、作法や形式にとらわれないで気軽に食事を楽しんでほしい」とご主人。創業以来、多くの茶人を魅了してきたこの空間で、茶心のなんたるかを知りつくした名店のもてなしに触れてみたい。 |