[先斗町・木屋町]
「京料理 藤や」は、京都郊外で営んでいた老舗の料理旅館より、ここ木屋町に移って20年になる。旬の味を堪能し、盛り付けはもちろん、部屋のしつらえまでを愛でる京料理の本来の形を、ぶれることなく一筋に守り通してきた。京料理一筋の料理長が生み出す四季折々の美味はもちろん、若女将や仲居さんのこまやかなもてなしにもファンが多く、「お客様を安心してお連れできる」と、接待などにもよく利用されている。
同店には茶道の精神が息づく。所望すれば茶を一服点ててくれるのも、この店ならでは。また襖の開け閉め、器は必ず持ち上げてお客様の前にお出しするなど、気遣いが行き届いたもてなしも、茶の作法に沿ったもの。仲居さんたちの美しい所作には、京の美意識を見る思いがする。店を飾る花は女将か若女将の手によって活けられ、掛け軸は、季節や客の好み、祝い事など用途に合わせて掛け替えられるなど、もてなす側の心配りが満ち溢れて、心地のいい空間を作り上げている。
「お客様に喜んでいただくことしか考えていません」と料理長は言う。自らが中央市場に足を運び魚介を吟味。ほかに京野菜、井戸水など“地”のもので調理をする。香りのよい出汁をとるため鰹は調理ごとに削って使うなど、基本をおろそかにしない姿勢が、多くの常連客の舌を満足させてきた。また、「他のにおいが移らないように」と刺身は魚介ごとに小鉢に分けて盛り付けたり、手付きの器のあとには平皿の一品を出すなど山谷を付けた構成もさすが。繊細な技あってこその美味を、ぜひ目と舌で満喫してみよう。
店内には掘りごたつの座敷、茶室、30人まで収容の広間のほか、一品料理も味わえるカウンター席もあり、1人からグループまで幅広く利用できる。京都の中心街を占める木屋町という立地のよさも、この店の魅力だろう。目の前を、森鴎外の小説でも知られる高瀬川が流れ、幕末の志士をしのぶ史跡も残るなど、ちょっとした歴史散策も楽しめるエリアだ。