北野天満宮を改築したときの余材で七軒の茶屋を建てたのが起こりだという京都最古の花街「上七軒」。通りには紅殻格子のお茶屋さんが軒を連ね、しっとりとした風情が漂っている。「上七軒くろすけ」はその中ほど、歌舞練場の目の前にある。明治初期から4代続いたお茶屋「吉田屋」の建物や調度品をほぼそのまま生かし、豆腐料理店としてオープンした。和食ひとすじの料理長が豆腐料理を中心にしたヘルシーな創作料理を堪能させてくれる。
主役の豆腐は、富山産の大豆と大徳寺(京都市北区)の地下水で料理に合うように特別に作ってもらったもの。「甘みが違う」と驚くお客様も多いとか。例えば「青竹豆腐」は、舌の上でとろけるようなクリーミーな食感でほんのり甘い。アンデスの塩を振りかけて、その大豆本来の甘みを味わうもよし。また、吉野葛でとろみを付けた醤油ベースのタレとの相性を楽しむもよし。塩もタレも付いてくるので、まずは両方を味わってみてほしい。さらに、秋から春にかけては自家製ごま豆腐の鍋も登場。見た目は普通の豆腐だが、ぷるぷると弾力があり、ほどよい風味がくせになりそう。
メニューは月替わりのコースと季節限定コースの2本立て。料理長自ら中央市場で仕入れた旬の京野菜や魚介類がふんだんに使われており、行くたびに新しい味に出会えるのも魅力だ。そんな中で人気の定番料理になっているのが「おこわ」。季節によって黒豆、桜、筍、新生姜、花山椒、栗など、いろんな味が楽しめるので、地元の女性客もリピーターになっているという。
「花街の歴史や文化を広く知ってもらいたい!」 京町家の再生に取り組む和工芸店「くろちく」がそんな思いでプロデュースしたこのお店。舞妓さんの名刺がわりの団扇が飾られた通り庭から帳場を抜け、階段だんすで2階に上がると、華やかな屏風が迎えてくれる。お料理の味はもちろんのこと、部屋ごとに飾られた掛け軸やお花、すだれ越しに見える景色も一緒に愉しむことができる。1階には「畳に座るのは…」という人のために改装してつくられたカウンター席も。また中庭を挟んで離れもあり、別料金で舞妓さん、芸妓さんを呼んで宴を催すのも良いだろう。接待で使うお客様が多いというのもうなずける気がする。 春の「北野をどり」を始め、平野神社の桜花祭(おうかさい)や北野天満宮のずいき祭りなど、伝統的な祭事のときにはいっそう華やぐ上七軒。イベントに合わせて訪れるのも一興だ。