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錦市場にほど近い御幸町通りの一角に、京情緒豊かな表構えを見せる近又。紅殻格子(べんがらごうし)に駒寄せ(こまよせ)といった典型的な京町家造りに、明治の面影を残すガス燈がしっくり溶け込んで、時の流れに磨かれた風格を漂わせている。

創業は享和元年(1801)、初代・近江屋又八により薬商人相手の宿として始まった。現在は食事のみの利用もできる料理自慢の宿として、国内のみならず海外からの来客も多い。「おいでやす」の柔らかな京ことばに迎えられ、磨き込まれた廊下をたどってお座敷へ。天井や障子桟に洗練された意匠を見せる書院風の和室は、街の喧騒が届かない落ち着いた佇まい。畳や木の温もり、障子越しののどかな光…、古きよき日本のくつろぎに満ちた空間美がそのまま息づいている。

庭の緑に心なごませながらいただく料理は、京の素材をふんだんに使った月替りの京懐石。錦市場の京野菜や舞鶴から運ばれるかつぎの魚介など、吟味した素材の持ち味を存分に引き出し、繊細で華やかな季節感あふれる料理に仕立てて楽しませてくれる。代々受け継がれてきた見事な器との調和も目のご馳走。心と技のこもった雅趣に富んだもてなしをゆったりと堪能したい。 |