[二条城周辺]
京野菜はもちろん丹波牛や丹波地鶏、若狭の鯖や甘鯛、美山の汲み上げ湯葉など…。地元の良質な素材を、先人から引き継いだ「食材を活かす料理法」を用いて正統派の日本料理に仕立てるのが「十駕」だ。料理の原点とも言える水は、柔らかく美味しいと評判の名水「桃の井」を使用。締めのご飯にもこだわり、一番いい状態で提供したいとの思いから、その日の分だけ毎日精米するとか。利用しやすい価格にも定評があり、年配のお客様から若いカップル、地元の家族連れまで、幅広い層に利用されている。
日本料理「十駕」のコース料理は、先附から季節ごとの変わりご飯に至るまで、緩急のある演出を愉しめる。秋なら新銀杏の揚げ物、小芋の塩蒸し、松茸の土瓶蒸しなど、派手さは無くとも季節の機微が漂う一品が連なり、期待感を抱かせながらメインの焼八寸につなぐ。目の前に運ばれた大鉢をのぞき込むと、職人の技が光る逸品がずらり。これらを肴に京の地酒に舌鼓を打つのも一興だ。余韻を愉しみながらお勘定を済ませると、リーズナブルな価格に更なる至福に満たされるはずだ。
「創作料理は一切作りません。伝統的な技法に忠実な本物の日本料理を多くの人々に知ってもらうことが私の使命です」と語るのは代表取締役であり、自らも板場に立つ竹氏清貴さん。いわく、どれほど良い素材を使っても、合理化一辺倒の「誤った調理法」を用いると、本来の旨みが損なわれてしまうとか。同店では一切の手間を惜しまず、昔と変わらぬ確かな手法で真の日本料理作りに情熱を注ぐ。「食材の本当の味を知らしめるのも料理人の仕事。十年や二十年の修行ではできない料理を提供します」と胸を張る。
白塗りの壁に丸窓が印象的な外観意匠は「蔵」をイメージしたとか。屋号を染めた暖簾をわけて格子戸をくぐると、店内は奥行きの深い京の町家風情を活かした造りになっている。畳みにテーブルという設えは、和の情緒に使い勝手を融合させた、お客様目線から生まれた発想だ。薬問屋を営んでいたという間取りを巧みに活かし、一階奥の席からは雪見障子に坪庭がのぞく。新旧の建具が見事に調和した室内空間を、間接照明の柔らかな明かりとJAZZの音色が優しく包み、訪れる者を上質のひとときへと誘う。